産婦人科疾患:卵巣がん
- 大きくなると10cmを超えることもあります。
- 小さいうちは症状がなく時間が経過します。
- 袋状の腫瘍はほとんどが良性疾患です。
- 術後化学療法は卵巣癌の増殖度によって検討します。
大きくなると、10cmを超えることがあります。
卵巣は子宮の左右に1つずつあり、その大きさは通常2~3cm程度です。 卵巣の内部には卵胞と呼ばれる構造が多数あり、そのひとつひとつに卵細胞がひとつずつ入っています。 卵細胞は定期的に卵巣から排出され、これを排卵と呼びます。 卵巣に発生した腫瘍を卵巣腫瘍と呼びます。 腫瘍は良性、境界悪性、悪性に分類され、悪性の卵巣腫瘍は卵巣がんと呼ばれます。 大きくなると10cmを超えることもあります。 卵巣がんには多くの種類があり、表層上皮性腫瘍と間質性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞性腫瘍に大別されます。
卵巣がんの症状は、腹部膨満感(お腹が膨らむ)や下腹部痛ですが、小さいうちは症状が出ないまま時間が経つことが多く、大きくなったり腹水がたまると症状が現れることがあります。 また、卵巣がんが胃の中で乱れたり、卵巣がんがねじれたりすると、突然強い痛みが出ることがあり、これを台形捻転といいます。
袋状腫瘍の多くは良性疾患です。
診断の流れとしては、問診に続き、手技・内診、エコー検査などを行い、卵巣腫瘍の有無を診断します。 腫瘍が嚢胞性(袋状)の場合は良性腫瘍ですが、充実部(血栓部)と嚢胞部が混在する場合や全体が充実している場合は、悪性腫瘍や境界悪性腫瘍が疑われます。 さらに、精密検査が必要と判断された場合には、CT検査、MRI検査、腫瘍マーカー測定、腹水が多いため叩いて腹水を採取できる場合には、腹水細胞診を行います。 胃がんや腸がんの転移で卵巣が大きくなることがあるので、胃カメラや大腸内視鏡の検査を行うこともあります。 これらの結果から主治医が良性か悪性かを総合的に判断しますが、最終的な診断は手術で採取した腫瘍の病理検査で決定されます。
卵巣がんの増殖具合によって術後化学療法を検討する
がんの治療の基本は手術療法ですが、卵巣がんの場合、そのほとんどが抗がん剤を使った術後化学療法を必要とします。 卵巣がんでは、子宮、卵巣、卵管の両側切除、卵管(胃と大腸の間の膜)切除が基本的な手術となります。 これらに加え、腫瘍の広がり具合によって、リンパ節切除や腸管・腹膜の複合切除を行う場合もあります。 ただし、境界悪性腫瘍や悪性腫瘍であっても、その性質や広がりによっては卵巣や卵管の健側を温存することが可能な場合もあります(進行期)。 従って、その後の妊娠・出産を希望される方は、主治医にご相談ください。
卵巣癌は、その性質や広がり(進行期)により、術後化学療法の必要性や抗癌剤の種類が決まります。 卵巣がんの90%以上は上皮性・間質性腫瘍(上皮性卵巣がん)に分類され、若年者を中心に発症する胚細胞性腫瘍は数%である。 上皮性卵巣がんの術後化学療法には、一般にタキサン系製剤(パクリタキセルなど)や白金製剤(カルボプラチンなど)が用いられ、ごく早期を除き、病気の進行度(進行期)や部位(組織型)によって、3~4週間の間隔を置いて3~6コース実施される。 手術後にこの化学療法を受けた患者さんの5年生存率は、I期(卵巣に限局)で約90%、II期(骨盤内臓に限局)で約70%、さらに進行したIII/IV期で約30%となっています。